例年ケガの発生件数が多い時期と言えば体育祭(運動会)のころ。
この記事では、発生しやすい怪我の救急処置や予防に向けた対策、注意事項についてまとめていきたいと思います。
この記事を書いた人
- 元養護教諭(旦那は現小学校教員)
- 公立小学校・私立中高一貫校での勤務歴あり
- 養護教諭1種
- 看護師・保健師の免許所有
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発生しやすい怪我と対策・救急処置
熱中症
体育祭に向けて重要となってくるのが熱中症予防。
熱中症対策は1日してならず。
早い時期から予防していくことが必要です。
体育祭の時期で多いのは5.6月または夏休み明けの9月の学校が多い印象です。
この時期は暑さに慣れていないことや生活リズムの乱れが起こりやすい時なのでより注意が必要になります。
予防方法
- 暑さに慣れておく
- 暑さが厳しくない時期から暑さに慣れておくことが必要
- 水分をこまめにとる
- 具体的に水分をとるタイミングを伝えることも大事
- 生活リズム・体調を整えておく
- 寝不足や体調不良は熱中症のリスクが高まります
- 手のひら冷却(または足裏・頬など)
- AVA血管の通り道である手のひら、足の裏、頬を適温で冷却することで深部体温を下げることができます。
新しい熱中症予防として最近話題の『手のひら冷却』についてはこちらでまとめています。
-
参考新しい熱中症予防方法【手のひら冷却・手掌前腕冷却】
続きを見る
対応マニュアルを教員間で共有しておくことも大切です。
熱中症の救急対応
- 救急処置
涼しい所へ移送し、衣服をゆるめる
OS1など、水分・ミネラル(塩分)補給
足を高くし、体を冷やして休養 - アセスメント内容
意識・顔色・めまい・発汗の様子
体温等バイタルサイン・頭痛・嘔気嘔吐の有無
こむら返りやけいれんの有無 - 受診の目安
足取りが悪い・発熱・自分で水分が取れない・嘔気嘔吐
※意識に異常がある場合(反応がおかしい場合)はすぐに救急搬送をしましょう。
身体を冷やすには首、脇、足の付け根など、大きな血管が通る場所を冷やすと効果的です。
濡らしたタオルなどを身体にかけ、扇風機やうちわで扇ぐことも推奨されています。
一度熱中症が起こると、電解質の乱れから体調不良が続いたり、熱中症再発したりする危険が高いことも覚えておきましょう。
突き指・捻挫
突き指・捻挫は学校でも多いけがです。
救急処置
救急処置の基本『RICE』の通り処置をしていきましょう。
- R:安静
患部は使わないようにすることが基本。 - I:アイシング(冷却)
氷嚢や保冷剤、冷水をバケツに入れて浸けるなど20分程度冷却、10分休憩を繰り返します。
湿布には冷却効果はないので、急性期は湿布よりも冷却が優先。 - C:圧迫・固定
内出血を抑えるため、動きを抑え安静にするために行います。
長時間圧迫をすると血流が悪くなるので気を付けましょう。 - E:挙上
心臓よりも高く挙げることで内出血を抑えることができます。
圧迫や固定におすすめなのが粘着包帯です。
☟こういう商品です
粘着包帯は伸びの良いテープのようなもの。
粘着包帯で固定を行うことでシーネ(添木)を使用しなくても固定ができます。
圧迫・固定をしたいケガにぴったりです。
頭部打撲
頭部打撲が起こった時は受傷時の様子を本人や周りにいた人に詳しく聞き取りを行いましょう。
大前提として、首から上のケガについては必ず保護者連絡を行いましょう。
救急処置
- 安静と冷却が基本。
- 受傷後から6時間は特に変化が起こることが多いので注意して経過観察を行う。
救急搬送が必要な場合
- 高い所からの転落や交通事故などが起こった際にはすぐに救急車を呼びましょう。
自発的に動けない場合は動かさないこと。(二次被害が起こらないように安全確保は必要です。) - 意識障害・反応がおかしい(反応がにぶい・会話が成り立たない、すぐに眠ってしまうなど)・症状が悪化していく・嘔吐を繰り返すなど
「たんこぶができたら大丈夫」という言葉は信じてはだめですよ!
首から上のけがについては怪我の大小関係なく保護者連絡を行いましょう。
保護者連絡の注意点
- けがをしてから6時間は特に注意が必要、学校でも注意してみていくが、48時間は経過観察を続けてほしいこと。
- 入浴はひかえること。
- 受診のめやすについて(痛みがひどくなっていく、反応や様子がいつもと違う、嘔吐を繰り返すなど)
学校側からCTの撮影を依頼することはNG!!
CTを行うかの判断を行うのは医師が行うものです。
CTは脳へのダメージも大きいので、できることならCTは避けたいものです…。
すり傷
グラウンドでのけがは傷口に砂が入り込みやすいです。
きれいに洗い流すことが最優先。消毒は行いません。
傷口が深かったり、異物が取れなかったりする場合は受診も必要になります。
すり傷に関して詳しく書いている記事があるので参考にしてください。
-
ケガをした時の救急処置の方法【洗い方・受診の目安・診療科目】
続きを見る
担任や体育科の教員との連携
怪我の予防や再発防止のために、どの競技でどのように怪我をしたのかを把握して教員と連携しましょう。
勤務校の経験談その1
『棒うばい』の競技で引っ掻き傷や爪が折れる生徒が多数発生。
爪切りを徹底してください!
勤務校の体験談その2
『台風の目』の競技で、自分の陣地に戻ったら棒を頭上に通す→棒をジャンプして次のチームに渡すというルールを取っていたところ…。
うまく棒を飛び越えれず顔面強打、歯が折れました。
もっと声かけをし合えば良かった。
危険。頭上を通したり、飛び越えるのはやめましょう。
競技には怪我をしやすいものが存在します。
ですが、ルールを定めることによって怪我を減らすことも可能です。
怪我の多い競技のひとつ、ムカデ競争についてニュースになっていました。
(ニュースはこちら ⇒ https://www.nhk.or.jp/minplus/0012/topic035.html)
記事内で紹介されていた怪我を減らすためのルール
- 列を組む人数を減らす
- 体格のいいひとが前方、最後尾はヘルメットを着用する
- 足を結ぶ紐は伸縮性のあるものにする
- 転けなかった場合に加点を設ける
競技の内容やルールについては繰り返し検討していくことが必要と感じます。
運動会・体育祭当日の救護
事前準備
前日までの準備
- 当日診療している病院の確認
- 氷や保冷剤、凍らしたタオルなど氷の作成
- 救急セットの再確認
当日準備
- 熱中症に備えて保健室を冷やしておく
救急対応の記録
日頃からいつ、だれが、なぜ来室したのか記録をとっていると思います。
体育祭の時にはいつもの記録に加えて、何の競技の時に怪我をしたのか、プログラムと合わせて記録をとりましょう。
振り返りの際には、スケジュールや競技内容の反省、来年度の体育祭のあり方の検討にも繋がります。
救急対応の記録から体育祭を振り返る
プログラムの内容、スケジュールは妥当であったか。
- 水分補給や救護を受ける合間があったか
- 怪我を防ぐことはできなかったか
まとめ
体育祭(運動会)の練習から当日にかけての注意事項をまとめてみました。
また、教員側も熱中症やケガには十分気を付けましょう。